ドキュメンタリー

ドキュメンタリー番組を3本見ました。全てアメリカのドキュメンタリーでひとつはラムズフェルドとパウエルのペンタゴン内幕モノ。ふたつ目は先のイラク戦争におけるメディアのあり方、みっつ目は9.11テロ事件の跡地を巡る建築家達の戦い。
ひとつ目のラムズフェルドとパウエルのドキュメンタリーはどこまでが本当でどこまでが嘘なのか・・・それとも全部が嘘なのかはわかりませんが、ま、一見の勝ちあり。ペンタゴンの中で9.11同時多発テロから今までの間で何が起きてきたのかを二人(というかラムズフェルドと軍制服組)の対立を軸に描いたもの。
ただし、番組はこのふたつの勢力の関係を説明・比較するのに精一杯で肝心の「なぜラムズフェルド(を中心とする背広組)はイラク戦争にもっていきたがったのか」というところにはあまり触れられていません。また、この番組では制服組も「戦争にはもっと人手がいる」と言っているだけで戦争自体の是非は問うていません。このドキュメンタリーによると9.11以降公式の場ではじめに「イラク」という言葉が出たのは当日の晩餐。その日からアメリカは周到に根回しし、イラク戦争に持ちこんだのです。つまりそれだけ時間をかけていたからイラク戦争はやめることが出来なかったのです。背広組が作った戦争のシナリオで戦争を行うことは背広組の制服組への「勝利」を意味していたというところも、ラムズフェルドがどうしても戦争をしたかった理由なのでしょう。しかし、だからと言ってハーフタイムで試合に勝った気で居てはなりません。アメリカがこの戦争でイラクに負けるということは背広組の勝利が取り消されてしまうのですから。
ふたつめはメディア戦争の話。アメリカのジャーナリストに言わせると今回のイラク戦争には5つの戦争があったというのです。1つ目は現場で実際に起こっている戦争。2つ目はアメリカメディアが伝える戦争。3つ目はヨーロッパのメディアが伝える戦争。4つ目はアラブ諸国のメディアが伝える戦争。5つ目はそれ以外のメディアが伝える戦争。このどれもが違うかったというのです。日本はそれ以外に入るのかヨーロッパに入るのかはわかりませんが、ヨーロッパとそれ以外の国をアメリカ軍隊についていって報道したかどうかで決めるのならば日本はヨーロッパの方に入ります。
実際、このVTRでも従軍のメディアにどこのメディアか訪ねたところNHK以外は全てヨーロッパのメディアでした。
アメリカでは9.11以降巧妙にメディア規制され、国民を間違った方へと導いたことはたしかです。この戦争でのアメリカの報道はまるでフットボールの試合のような報道だったそうです。血もなければ死体もない。遠くからの爆発とイラクに立ち向かう若い英雄達を全面に押し出し、チェスかTVゲームの様に「ここにこれだけの兵力が居て、いまここでテロが起きているからこの兵力をそっちにまわして・・・」などとスタジオの模型の戦車をアナウンサーが動かすのです。その結果、イラク戦争に反対するようなことをちらっとでもにおわせた報道関係者が辞職にまで追い込まれることになりました。9.11以降、イラクとの戦争について、TVに出演した専門家・ジャーナリストは800人を超えるそうですが反戦を言ったのはたったの6人だったそうです。これは明らかにメディアによって国民をコントロールしようとしていたことのあらわれです。はじめは政府に媚を売るための報道規制だったのですが、それを続けているうちに国民がそれ(イラクは倒すべき悪質国家だ云々)を信じ過ぎてしまったため、今更後に引けなくなったのか、イラク戦争に賛同してエンタテイメントのようにイラク戦争を伝えた方が視聴率が良かったせいか、アメリカのイラク戦争報道は開戦してからも変わることなく肯定しつづけました。
ヨーロッパのメディアはアメリカのように極端な戦争賛成ではありませんが、それでもアメリカ軍に守ってもらい、寝食を共にすれば仲間意識も芽生えてきますし、この人達にとって都合の悪い報道は出来るだけ避けようという感情が産まれるのは当然です。それが報道に影響を与えるのも当然です。
アラブのメディアは一転して戦争で足を失った少年や生々しい傷が残ったままの少年の様子のみを報道していました。
メディアがどのように伝えるかによって視聴者が受ける印象がどのようになるかはとても変わります。メディアが正確な情報を伝えることは当たり前として、視聴者側もメディアを疑って見ることは大切だと思いました。「新聞を疑え」ですか。
みっつめは9.11のテロ跡地ワールドトレードセンター跡地にどのようなビルを建てるかのドキュメンタリーで、市主催のコンペで選ばれた「自由の女神」をモチーフにしたタワーを設計した芸術家タイプの建築家と、実際、跡地の開発権のある業者に頼まれ、出来るだけ金になる機能的なビルを作ろうとする建築家の戦い。結局はお互いが歩み寄った結果どうしようもない駄作が完成したそうです。
しかしまぁ。この二人どっちもちっとも譲らないんだもの。わたしゃあんな意固地な世界ではやっていけんわ。ちなみに私は金になる(テナントがたくさん入って地下鉄の駅と直結している)ビルよりも「9.11テロの跡地」としての意義ある建物の方が良かったなぁ。